ブラジル・日本人サンバダンサーの華麗な日常

ブラジルに住む日本人サンバダンサーの全く華麗ではない日々

17年目のクリスマス・ツリーⅠ

今年ももっとも私が孤独を感じる季節がやって来た。

孤独なのは別に今に始まったことではないのだが、言わずと知れた年末年始~1月末の私の誕生日までの約一ヶ月間が毎年恒例のデスヘル月間である。

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以前こちらにも書いたように、え?…バツ…?、マス…?、…って、何ですか?

と、ずっと知らないふりをして生きていくのにも限界というものがある。

 

コロナ前に行ったファベーラのクリスマスボランティアに今年は行く気満々だったのだが、今年はイヴ当日の人員は必要で無いみたいな雲行きでハッキリした返事も貰えぬまま当日を迎えてしまった。

 

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だが今年は幸い我らがM-1がクリスマスに重なっていたので俺は大丈夫だ。

 

ご親切にイヴの日の家族のディナーに誘ってくれたブラジル人の知り合いもいて、とても有難かったのだが正直な話、たいして知らない家族と一緒に過ごしても変に気を遣ったり時間を持て余して楽しめなかったりとさらに深い孤独を感じてしまう事は既に何度か経験済みであったので、予定があるとお互いのためのにがい嘘を吐き今年はひとりで過ごすことに決めていた。

 

そこのお若い旅の人。この村では、それほど言語が堪能で無かったり、あんまり知らない人と長時間過ごすのが苦手な人は小さい子供や犬猫などのペットがいない家のイベントごとには決して行ってはならぬ。

この掟を守らぬ者には災いが降りかかることになるのじゃ。

 

 

家で好物のおこわを焚き、アツアツのそれをお椀によそい、『もちごめりーくりすます。』と一人表情筋をピクリとも動かさずにつぶやいたその瞬間こそが私の今年のクリスマスにおける最大の山場であったと言えよう。

 

M1事前特集→敗者復活→M-1本チャン→記者会見反省会→打ち上げ→翌日速報番組まで観て✖マスとやらを無事にやり過ごした翌日、年末年始に家族との用事以外に何も予定の入っていない“ブラジルの最弱の弟”と会うことになっていた。

 

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久しぶりだしゆっくり話ができるうるさくないとこに行こう(ブラジルの飲み屋はたいていやかましい)という話になり、雰囲気の良い店を知っているという弟の提案に彼の成長を感じつつそれに同意した。

 

その店の最寄りの駅で待ち合わせて弟と会うも、

「僕らはダメだね~。事前に何も調べてこなかったねえ~」

と他人事のように言いながら携帯を取り出し、彼は今さら今日その店がやっているかどうかを調べ始めた。

ブラジルはクリスマス以降は年始までお休みになる店も多く、インスタを見るとまんまと年末休業のお知らせが載せられている。

しらっと私にもダメ”認定を下し知らぬ間に共同責任とされていたが、弟の知っているへ店誘われるという形だったのでそのイニチアチブは彼にあり、どちらかというと今日店がやっているかどうかの事前確認はあなたのパートなのでは?

ともちょっと思ったが、別に腹を立てたるようなことでも無い(言い方以外な、)ので、急遽予定を変更しイビラプエラというここいらでは一番でっかい公園にあるでっかい電飾クリスマスツリーを見に行くことにした。

 

余談だが、弟の日本語能力はかなり上手くなっていてもやはりネイティブでは無いので言葉を間違えて使ったりすることもある。

お互いの語学向上のために気になるところは指摘することもよくあるのだが、これはそういう言い方はしないよ。こう言うんだよ、とやんわり言うといつも食い気味に

「そ、そそ。」

と、さも僕はそんなのわかってましたが?、というふうに若干上からぽい言い方をするのが絶妙な感じに鼻につく。

弟は多分『そうか、わかった。』くらいの意味で使っていて、虚勢を張って言っているわけじゃないのは理解できるのだが、かくも他言語のニュアンスというものは難しい。

 

 

私がサンパウロに来た当初からイビラプエラ公園というところにあるジャンボツリーの噂は聞いていた。

いつか素敵な彼氏的なひとと一緒に行く日を夢見、友人らに誘われても頑なに行かぬままとっておいたのだが、このままだと一生行かない可能性がいよいよ濃厚となってきたのでしょうがない、これを機に全然ロマンティックではない弟とではあるが行ってみることにした。

 

またメトロに乗り公園の最寄りの駅まで。

 

年始の数日までの期間ツリーは飾ってあるはずとなんとなく知っていたが今年も本当にまだあるのかを調べたり、最寄りといっても駅から徒歩20~30分の距離なためどういう手段で行こうかと弟とわちゃくちゃした末、行きはえんえんと続く下り坂だもんで歩いて向かうことにした。

喉が渇いていたので、駅のそばのコンビニでお酒を買って、飲みながら歩く。

 

ブラジルイチ腕に下げたビニール袋が似合う男



まだ19時くらいだったしブラジル人の弟と一緒だし、そんなに治安が悪い地区でも無い。

それでも一応弟に、歩いて行っても危なくないよね?と言ってみた。

 

 

「大丈夫! …まあでも何かあっても、どうせ俺は守れないけどね~w」

 

とあらぬ方向を見て爽やかな感じで言われ思わず飲んでいたお酒を吹きそうになった。

 

わざわざ言われなくてもわかってはいたが、君はなんてすがすがしいほどまでに頼りがいの無い男なんだ。

正直すぎる。面白すぎる。

 

万一暴漢に襲われても私を打ち捨てて一目散に逃げたりはしないだろうが、勇敢に立ち向かったりも決してしない男だということは長年の付き合いで良くわかっていた。

ねえねえ、彼女と一緒にいる時でもそういうこと言うの?と、純粋に気になって聞いてみたが、変わらずヘラヘラしていたので、彼女と一緒でもきっと同じことを言っていそうだ。大丈夫か。

 

特にこのブログに書いていなかったが、

“日本に行った時に1日だけ会ってその後一回も会わないまま5年付き合った日本人彼女みっちゃん(仮名)”

と別れてからここ2年くらいの間に彼はやる気を出し、数人の女性とアプリで知り合いデートをしていて付き合ったりしたこともあった。

数か月前にも新しい彼女が出来たという報告を受けていた。

そういった状況もあって近々はそんなに頻繁に会ってなかったのだが、暇をしていた弟から連絡が来たので、私に別に報告すべきニュースなどは無いけど遊ぼうよ、と言うと、僕も特に何のニュースもないけど会おう、ということになったのだ。

 

俺は本当に道が全然わかっていないなあ~♪

 

と、道がわからずうろうろして反対方向に進もうとしたりしている頼りないことこの上ない弟をこっちだよ、と導きつつ、おしゃべりをしながら歩き続けた。

 

あと10分か15分くらいで着くよ、というときに、

ああ、15分あればいけるかな~、と彼は自分の彼女との近況を語り始めた。

僕にもたいしたニュースは無いよ~、と言っていたのに、最近の彼女とはちょっと前に別れていたと言うのだ。

 

あるじゃん、そこそこのニュース。

 

Ⅱにつづく