予告通り今回も私のブラジルの弟の話である。(前回はこちら)
まだ彼が日本にいる日本人の元カノみっちゃん(仮名)と遠距離恋愛街道ばく進中でありアツアツだった頃。
彼は周りにいる女子には全く興味のカケラも見せず浮気もせずみっちゃんひとすじだったので、
いくら構成成分が100%植物性由来なんじゃねえかと思うようなギラギラ感皆無に見える弟であっても、健康な若い成人男性としてずっと愛しい人と触れ合う事さえかなわずアッチのほうは一体どう処理しているのだろうと要らぬ心配をしないでもないでいた。
だが彼らは会えない日々の中でもお互いのたぎるエロスを消化させるべく、遠隔ながら二人でいろいろな工夫をしてやりくりをしていたらしい。
要はビデオ通話で話すときにバーチャルごにょごにょ的なことをしたり、お互いの破廉恥な写真や動画を送り合ったり。
実際私もみっちゃんの近影写真を携帯で見せてもらおうという際に押しどころを間違えたうっかり弟の凡ミスによってみっちゃんのあられもないお姿の写真をチラッとかいま見たこともある。
弟はそんなことは絶対にしないタイプなので良いが、リベンジポルノでSNSで拡散されたりすることも珍しくないこのマッドでファッキンな世の中だ。
彼氏とはいえ別れたら豹変するかもしれない、しかも一回しか会ってない人にそんな写真を送るのはやや迂闊な事と思うのだがみっちゃん大丈夫か、と大きなお世話だがみっちゃんの性に対するそのリテラリシーを危惧したりもしていた。
相手が弟でみっちゃんは命拾いしたな。
余談だが私にも、数年前にちょっといい雰囲気になりかけたブラジル人男性が(チュウすらしていない)毎晩のようにエレクトした自身の猛り狂った熱い肉棒写真やブラジル人男性と日本人女性との絡みの短い動画を送りつけてくるので非常に戸惑いドン引いたというクソしょーもない思い出がある。(詳しくは別回で。)
なので、愛の砂漠でひとり彷徨い続ける私が潤いを失いカラカラしているから俯瞰していられるだけで、ブラジルでも日本でも、愛のサファリにお住すまいで熱に浮かされチンパン化した方々は後先考えずそのようになってしまいがちなのも本来人としてごく自然なことなのかもしれない、とも思う。
だが、相手に悪気が無くてもうっかり、ということがある。
ある日弟は家族と一緒に旅行に出かけた。
メンバーはお父さん、お母さん、妹、おじいさん、おばあさん、叔母さん。
私は弟のうその姉なのでもちろん関係が無く、当然参加もしていない。
旅行から帰ってきて、撮った写真を家族みんなで見られるようにグーグルで共有して欲しいと頼まれた。
弟はお安い御用とばかりに早速写真を共有し、その日はもう夜遅かったのですみやかに床についた。
すると夜中にお父さんが彼の部屋をノックしてきた(弟は父母妹と同居)。
返事をするとおずおずとドアを小さく開けた隙間から、
「ええと、たぶん、たぶん、、、たぶんだよ?たぶん、“みっちゃん”の写真が僕の携帯に送られてきてると思うんだが、、、。」
弟は寝ぼけていたので、
『そうかあ、みっちゃんの写真がお父さんの携帯にかあ。いつ送ったっけなあ。。。』
と、ぼーっと考えたのち、さすがのノンビリ弟もハッとした。
最近特にみっちゃんの写真をお父さんに送った覚えは無く、お父さんがいつになくバツが悪そうにしていたことからピンときた。
思い当たるのはさっきのグーグル共有しかない。
そう、弟は先ほど旅行写真だけを家族で共有したつもりが、手違いで全部の自分の情報を家族と共有してしまっていたのだった。
当時お父さんだけがアンドロイド端末を使っていたので否応なしで自動的にデータを受け取っており、いち早く同性である父だけがその異変に気が付いたのは不幸中の幸いだった。
普段の写真ではみっちゃんの顔を既に見知っていたお父さんがしきりに『たぶん、たぶん、、、』と繰り返していたのは、それは、
顔の写っていないみっちゃんの、全盛期のインリン・オブ・ジョイトイの如きM字開脚写真(下着無し)が大量に彼の携帯に流れ込んできていたからだった。
顔が写っていないんだもの。そりゃ父だってguessして遠慮がちにしか家族の平和がかかったこの緊急事態を息子に伝えることはできない。
弟は父には速やかにすべてのデータを削除してもらうよう依頼をし、光の速さで他の家族へのグーグルの共有設定を変更した。
現在はその当時とは逆に父だけがiPhoneに、他の家族は皆Androidに変えているというので、もし今だったら父以外の、母、妹、祖父、祖母、叔母、のそれぞれの携帯に共有した瞬間に送信されてそこにデータが残り、その時点ですべての試合が終了することになるのでそんな惨事にならず本当にまだ良かった、
と、胸をなでおろし遠い目をした弟は語った。
御開帳写真こそ今も昔も私のフォルダ内には無いが、
以前、こちらに住む日本人の子供達にレッスンをしていた時の中休み中に無邪気な子供達が寄って来て、
「せんせーの写真見たーいっ!」
とふざけて私の手にあった携帯を奪い中身を勝手に見ようとされたことがあった。
『はっはっはっ、コイツぅ~☆、お行儀が悪いぞぅ~!』
と別に写真見られるくらいまあいっか、と、笑顔で携帯をいじらせるがままにしかけて、
前日に送られてきた前述の“肉棒写真送りつけ男の写真”を消し忘れフォルダ内に放置したままにしていたことを思い出した。
思い出してサァーっと一瞬血の気が引き、真っ青になってすぐさま携帯を奪い返した。
すんでのところで子供たちは写真を見るには至らなかったが、
いつもなら一緒にふざけて笑ってくれる愉快な先生が、突然豹変し悪魔のような恐ろしい形相で襲いかかってくるというその所業が彼女たちのトラウマになっていないか心配だ。
だがもしその写真を見てしまっていたらいろんな意味でもっと酷いトラウマを抱えることになってしまっていた筈なので、あの時のことはどうか大人になったら許して欲しい。全部変な写真を送りつけてきたあいつが悪いのだ。
とにかく、あの時に子供たちに見られないで本当によかった。
と、思い出しながら語る私もまた、あの時の弟と全く同じ遠い目をしている。
次回も弟のエロスにまつわる別の話になります。つづく
お手数ですが、二つとも足跡だけでもつけていただければ嬉しいです