この年末は久しぶりに友人の家でブラジル最弱の弟と一緒に年明けを迎えた。
やつら男共は何もしない・できないので(家事)、自分が食べたかったのもあってかき揚げ入り年越しそばとカレーと餅ピザとイチゴゼリーを作り、片付けも全部ひとりでやった。
別に自分がやると言ったことなのでそれはいいのだが、さあ帰ろうという段になって私がみんなの使った食器を洗ったりしていると、手伝いもしない・できない界の中でも右に出る者がいない男である弟が、
「えぇぇぇぇぇぇ~~~、姉さん~、まだあ~?」
と暇そうに言いに来たのでさすがにイラっとして、コロスと言って腹にワンパン入れたことも今はいい思い出だ。
弟の愚痴はどうでもいいのだが、お母さんに全部やってもらって家事などが何もできない人のことをブラジルでは“Filinho da mamãe”(ふぃりーにょだままい)という。
直訳するとfilinhoは『小さい息子』、 daは『の』、 mamãeは『ママ』。
ママのかわいい息子ちゃん、という感じになる。
かれこれ数億年前の地球に恐竜がいた頃の話なのだが、珍しく私はブラジル人男性とデートをしていた。
つたないポルトガル語でなんとか会話を試み、その彼が家のことが何もできないと言うので、ここだ!と思い、その時覚えたてだったその熟語を使ってみることを閃いた。
えーと、確か、日本語に訳すとお母さんの息子、って意味だったよな。。。
で、あなたは~です。はVocê é ~だし、息子がfilhoで、お母さんがmãeで、それをつなぐのがdaだから、、、なんか語尾がちょっと違う気がするけど意味はあってるし、使ってみよう!
そう思って、私はこう言った。
「Você é filho da mãe!」あなたはくそ野郎です(=ファッ〇ユーと同じ意味)
私は当時そんなひどい意味の俗語として使われていることを知らず、お母さんに大事にされてるのね~(笑)、くらいの軽い意味で使ったつもりだったのだが、さっきまで私を口説こうとあんなに優しかった彼がそれはもう鬼のような形相で烈火のごとくキレ始めた。
あまり汚い言葉を使わないように覚えないようにしていたことが裏目に出た。
私が何か間違えたようだということはわかったので、そんな意味で言った訳ではないと弁明をしたのだが、私がポルトガル語をあまりしゃべれないことはわかっているはずであっても彼の怒りはなかなか収まらなかった。
しかし直訳の意味は一緒なのに、あんまりにも紛らわしくないか。
外国から来た人がうっかり間違えて使って殺人事件とか起こってはいまいか。
よく考えたらちょっと家事をやらないだけで東の遠方から来た変な女にブラジル人なら絶対に逆上するような汚い言葉をいきなり浴びせかけられた彼もかわいそうだ。
頑張って説明して理解はしてもらえたようだが、すごくバカな犬くらい激しく怒られたので私もしょんぼりしてしまいその後あまり盛り上がらず、二度とその彼とデートをすることもなかった。
ほろ苦い思い出になるかと思いきや、別にその彼が好きなわけでもなかったし、あのぶどうは酸っぱかった(イソップ)に違いないし、ブラジル人やポルトガル語を勉強している人に話すと鉄板でウケるので、今はいい思い出だ。
だが人間関係が壊れる恐れもあるので、ポルトガル語学習者の皆さんはくれぐれも言いまつがわないようにご注意ください。
出典:Amazon.com.br eBooks Kindle: Filho da mãe, Gonçalves, Hugo