前回より小粒ではあるが、いくつかのポルトガル語にまつわる言いまつがいのネタがあるので書いてみようと思う。
初期の探偵ナイトスクープの“爆笑!小ネタ集”の桂小枝の回の雰囲気でご覧いただきたい。
奇妙なジュースを頼む東方から来た女
まだ私がブラジルに住む前、カーニバルのためにブラジルと日本を行き来していた頃の話だ。
ブラジルはフルーツのフレッシュジュースが安くて美味しいので、近所にあるジュース屋さんでイチゴジュースを頼んだ。そのつもりだった。
「スッコ ジ フランゴ ポルファボール(イチゴジュースをください)」
だが、そんなものは無い、と店員さんは困惑した顔で言う。
でもそこはジュースにするためのフルーツが店頭に飾ってあるタイプの店で、私は軽くキレながら今よりも数倍ひどいカタコトのポルトガル語で、一生懸命イチゴジュースを欲しい旨を繰り返し告げた。
「ほら、ここにイチゴがあるじゃん、できないわけないでしょ!」
と、しまいには完全にキレた状態でイチゴを指さしながら言うと店員さんは、
「ああ、これならできるよ、スッコ ジ モランゴだね」
と言ってジュースを作ってくれた。
そこでハッと初めて気づいたのだが、私はずっとモランゴ(イチゴ)のことをフランゴ(鶏肉)と言っていたため、何度も何度も、
「鶏肉ジュースをくれ」
と言っていて、あちらからすればそんなものはないと言うとキレてくる迷惑な東洋人だったわけなので、悪気はなかったとはいえ非常に申し訳なく思った。
あと、ちょっぴり恥ずかしかった。
感動!母と子の愛の物語
これは当時ブラジルに住んでいて、小さな子供がいた日本人の友人の話だ。
あるカジュアルなレストランに子連れで行ったとき、子供にもご飯を食べさせるのに大きなフォークだとやりにくい。彼女は店員さんを呼んで、
「スプーンをください」
と言ったが、そんなものは無いと言われた。
カジュアルとはいえ、スプーンが置いていないレストランなんてあるわけがない。
そう思った彼女は、やはり何度も何度も我が子のために「スプーンをくれ」と言い続けた。
あんまりしつこいので、奥から偉い人が出てきて彼女にメニューを見せながら、
「この通り、うちにはコエーリョの料理は無いのです」
と言いに来たところでハッと気がついた。
彼女はずっと「コエーリョをください」と言っていたのだが、スプーンはコリェー、そしてコエーリョはウサギという意味なのだ。
カジュアルなレストランにウサギ肉など置いてあるわけがない。
それなのに彼女は庶民的なレストランでずっと
「ウサギを持ってきて」
と気高く言い続けていたというので、あちらからしたらとんだパラノイアが来たぞとさぞお困りになったことだろう。
謎の大通り
ブラジルのサンパウロに、アヴェ二―ダ・パウリスタ(パウリスタ大通り)というブラジル全土でも有名なビル街の大通りがある。
大通りはアヴェニュー=アヴェニーダ、だからパウリスタが通りの名前になる。
音楽留学で日本から来たばかりの歌うたいの友人がそれをいつも「パウリ―ダ・アヴェ二スタ(翻訳不能)」と単語の頭を取り違えて呼ぶので、彼女とバンドを組んだときに(私はダンサー参加)間違えてやがるくせして語感がちょっとかっこいいのもあって、彼女への戒めのためにバンド名に採用してやった(只今活動休止中)。
感謝をするタイミング
これも友人に聞いた、さらにその知り合いであったブラジルに来て間もない日本人青年の話なのだが、
電車に乗っていた時、その電車が揺れてよろけてしまい、近くのおばさんの足をガッツリ踏んでしまった。
まずい、早く謝らなくては、と思ってあせって咄嗟に、
「オブリガード!(ありがとう)」
と言ってしまった。
来伯して間もないとはいえむろん彼もポルトガル語で“ごめんなさい”くらいはわかっていたが、言った自分が一番びっくりしてしまいそれ以上言葉が出てこなかったという。
思い切り足を踏まれてお礼を述べられたおばさんの心中やいかに。
そのおばさんは何も言わず、だがものすごーーーーーく嫌な顔をされたそうだ。
さて、今回の小ネタ集はいかがだったでしょうか?
ポルトガル語やブラジルのことを知っていると思わずニヤリとしてしまうと思うのだが、そうでない方に思うようにお伝えできないのが歯がゆいばかりだ。
ブラジル在住の、もっと芳醇な言いまつがいをお持ちだという方はブログに載せますのでぜひご一報くださいw。
お手数ですが、二つとも足跡だけでもつけていただければ助かります