私の使っているはてなブログの今週のお題が「引っ越し」だそうで、前回も去年引っ越した時の話を書いたのだが、引っ越し繋がりで思い出したので今日は10年以上前のまだブラジルにそんなに慣れていない頃、リオ・デ・ジャネイロで部屋を探した時の事を聞いていただきたいと思う。
なのでこれは私がリオのサンドラさん(サンドラさんシリーズ参照)のアパートに住む前の話だ。
リオのカーニバルに出るためパスィスタというダンサーの一員として何とかあるチームにもぐりこむことができそうで、その練習に参加するために拠点となるアパートを探していた。
8月ごろから毎週のようにリオには来ていて、たいてい友人になったばかりのヤスミン(私の彼はバンジード参照)のところにお世話になったりしていた。
だが彼女もよそに泊まったり帰りが遅くなったり仕事で出張するときもあったりで、彼女がいない間も泊めさせてくれとイチかバチかずうずうしく頼んでみたがうまいこと逃げられ(当然だ)、やはりチームの近くに自分で家を借りなければということになった。
ヤスミンの家がチームの近くだったこともあり、近所で探したのだがこれが意外と難しい。
ヤスミンの目の前のアパートに『貸します』という看板があったので聞きに行ってみるも、条件が思ったよりうるさく、リオに保証人がいないとダメだと言う。
保証人と言ってもきちんと自分の不動産を所有していることが条件で、真面目な日本人としては迷惑をかけるつもりも踏み倒して逃げるつもりもさらさらないが、保証人といえば借金⇒夜逃げ⇒一家心中、などというマイナスイメージを想起させるため、ヤスミン含め最近知り合ったばかりのブラジル人の友人に頼むのはものすごく気が引けた。
と、いうか知り合ったばかりの外人に保証人になってくれと頼まれても自分なら100パー全力で断るので、誰かに頼るということはできなかった。
何か月分かを始めに払ってしまえば保証人が無くても平気なこともある、という情報を得たのでそれを心のともしびに不動産屋さんに行ってみることにした。
当時はサイトを通して家を借りるのはまだあまり一般的でなかったのだ。
不動産屋さんが果たしてどこにあるのやらさっぱりわからなかったので、駅前で聞き込み調査を開始した。
今よりも10年以上前の話なので、ポルトガル語もあんまり話せない。
駅前に2軒、駅前通りから5分ほとのところにも一軒の不動産屋さんがみつかったが、一生懸命説明するも保証人がいないとだめだ、とか今は部屋がない、とか、つたないポルトガル語しかしゃべれず保証人もいない平たい顔の民族に対する世間の風は厳しく、体よく門前払いをされていた感じで、部屋さえ見せてもらえなかった。
(私は日本人にしては顔は濃い方ですが、ブラジル人からしたら東洋人はみんな同じ平たい糸目顔のくくりです。)
毎日灼熱のリオの内地を歩いて口コミで不動産屋の場所や空きのあるアパートを探す日々で、肌にはすっかりタンクトップと短パンの変な日焼け跡がついていた。
そんなとき、駅から10分くらいの線路の反対側の通りに不動産屋を見つけた。
入って事情を話すとそこの経営者だという中肉中背で無精ひげのおじさんは今までになく親身になって話を聞いてくれた。
連日の報われない部屋探しでくたくただった私は、ここぞとばかりにカーニバルに出るためにこっちへ来たこと、どうしても部屋が借りたいということを熱く語った。
そうかい、わかったよ。。。
秘書のような女の人が席をはずしてしばらく経つと、おじさんは室内の電気を消した。
外はまだ日は暮れていなかったので部屋の照度にほとんど変わりはないが、なんとなく不穏な感じはした。
「じゃあ、踊ろうか。。。」
…絶対におかしなことを言われていることはわかっていたが、とても疲れていたのとせっかくのチャンスを逃したくない一心で、薄暗く狭い不動産屋の事務机の横をすり抜けるようにして手と手を取り合いやけにムーディーなペアダンスを踊った。
まだ夕方で大きい窓が人通りのある道に面した事務所だったので、いきなりそんなに悪さはできまいと身の安全は冷静に確認していたが、知らないおじさんとの突然のチークタイムチャンスはどんなに控えめに言ってもとっても気持ちが悪く、部屋をどうしても見つけたい一心でいい印象を与えようとがんばったのだがそれでもかなり腰は引けていた。
※画像はイメージです
愛想笑いで適当にごまかしながら翌日に部屋をいくつか見せてくれるという約束だけは必死に取り付けてそのセクハラ不動産を後にした。
翌日また事務所を訪ね、約束通り候補の家々を見せてもらう。
独り暮らしにしては広すぎる家がほとんどであったが選んではいられない。
まあまあ気に入った家があったので、もうここに決める、とセクハラ不動産経営者氏に告げる。
「おお!そうか、わかった、おめでとう。では今すぐここで喜びのサンバを踊れ!」
…絶対にしなくてもいいことを強要されているのはわかっていたが、とても疲れていたのとせっかくのチャンスを逃したくない一心で(デジャヴ)もうやけくそで喜びの舞を舞った。
帰りがけに空き家ありますの看板を指さし、これはもう取っていいんじゃないか、と指摘するも、まあまあ、と言って取り付け直していたのでおかしいと思っていた。
結局別日に改めて契約をしに行くと私の貯金額を聞いてきたので日本の銀行カードの明細書を見せた。
換算する計算ができないと言ってなぜか謎の中国人を連れてきて計算させたり、近所の人達まで呼んで私の貯金額ブラジルレアルでいくらか大会が始まった。(その時ブラジルに口座を持っていなかったのでブラジルレアルで証明できるものが何もなかった)
私の貯金額はその界隈の人に筒抜けになり、家を借りる話ものらりくらりとかわされ遅々として進まないしで全く信用できなくなり結局そこの不動産は切って他で探すことにした。
※わかってるとは思うけど写真はイメージです
つづく
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