ブラジル・日本人サンバダンサーの華麗な日常

ブラジルに住む日本人サンバダンサーの全く華麗ではない日々

今日の私のブラジルと、西原理恵子さんの漫画を読んで思ったこと。

暑い。

こちとら現在ブラジル・サンパウロの真夏真(三文字全部漢字ほぼおんなじ♡)っ只中だ。

みなさまはいかがお過ごしか。

恵方巻食い過ぎて腹を壊してはいまいかな。

まあ、そんなに幸福に貪欲になりなさんなよ。

 

この夏は久しぶりに天気の良い日が続いており、日中の日差しもめっぽう強い。

と、いっても、サンパウロはリオなどもっと北の方と比べると特に夜はかなり涼しいし、さらにサンパウロの私の家は比較的涼しくクーラーが無くても耐えられるくらい快適だ。

日本の夏と比べてもじめじめしておらず、日陰においてはしごくカラっとしている。

 

今日は最近できたドラッグクイーンの友達に誘われ、サンパウロのちょい外れのほうにある彼女の所属するサンバチームに行ってきた。

 

彼女とは、この1月下旬に行われた、去年私が出てベストドレッサー賞をいただいたサンパウロの2番目に大きい(と思われる)カーニバルサンバコンテスト(今年は私はコンテストには不参加)の、サンバの多様性をテーマとした今年の開幕の踊り手グループにお互い選んでいただいたという縁で、仲良くなった。

ちなみに他の開会のショー招待者はサンパウロの子供のカーニバルの女王と王様、プラスサイズの女王2名、ドラッグクイーン(←誘ってくれた友達)、トランスジェンダーの女王、サンバを踊るダウン症の女の子、赤毛の白人の身体キレキレの踊り子、私(←外国人代表らしい)という、まさに多様なラインナップであった。

 

仕事としてではなく、純粋に楽しむために全く見知らぬサンバチームに訪れることは昨今の私には稀な事で、面倒見の良い彼女のナイスアシストと、ちょっと外れの方に位置するチームだということもあり皆日本人である私を珍しがってとっても歓迎してくれて、久しぶりにリラックスした楽しい時間を過ごすことができた。ありがとう、フライーラ。

私は、主にブラジルに住む日本人の方たちに向けレッスンをさせていただいていることもあり、サンパウロの中心地で毎日愛を叫んでいる都合上、サンパウロのバリバリ都会に住んでいる埼玉出身ブラジルシティーガールである。

 

本日訪れたそのチームは、聞いたところサンバ会場でパレードを行う中で最も中心地から遠いチームらしく、家から電車など乗り継いで一時間半ほどのところにあった。

 

帰りは、電車が30分ほど遅れやがり、私の家の最寄りの地下鉄まで終電で辿り着けなかったため、仕方なく終電があった電車の最終地点で降りてタクシー的なもの(UBER)を呼んで帰らざるを得なかった。

 

私の乗った駅から一緒の車両に乗って来て少し話をした女の子が同じ駅で降り、

あなたはどこまで行くの?私も地下鉄で彼氏の家まで行くはずだったのに、電車が遅れたせいで地下鉄が終わっちゃったね。。。

と、話しかけてきた。

 

聞くとその彼の家はタクシーで私の家へ行く道の中間あたりで、一緒に相乗りをしても良いと思える場所だった。

 

でもね、悲しいかな、私、少し、知ってるの。

彼女は私の東洋人顔と、なまりのあるポルトガル語から、私が外国人だということはわかっていたと思う。

私は全くもって、わがままなクソ人間であるのだが、それなりにできる範囲は他人に親切にしてあげたいとは常日頃から思ってはいる。

だが、悲しいかな、ブラジルでは外国人を騙そうとする人がたくさんいるので、過剰までに警戒しないといけないことも多い。

 

最終電車で一緒に降りた駅で、私は携帯でタクシーを呼び、彼女をどうしたもんかと思案する。

彼女は、携帯で彼氏にここまで迎えに来てくれと連絡を試みているのだが、まだ連絡がつかないのだ、と言う。

 

彼女を残して私だけ帰るのは心配だったので、では、私の家の方が遠いし、あなたは5レアルくらいくれればいいから、一緒に帰ろうか、と提案してみた。

私は地下鉄で彼の家にいくつもりだったから、小銭しか持ってないの。。。

と、彼女は言ってポケットの小銭を私に見せる。

 

つか、ギリギリすぎんだろう。

 

でも、そんなことは決して裕福では無いブラジル人の間では起こりうることだが。

 

 

うん、そう、知ってる。あやしいの。

 

でも、私も若かりし頃、日本で酔っぱらったり、うっかり財布忘れて家出てしまい、困り果てて友達とかに交通費借りたことだってあるし(さすがに通りすがりの人に交通費借りたことは無いけどさ)。

 

それで、その子の彼氏がUBERで迎えに来てくれるから、あなたもそれに一緒に乗っていって折半しない?と提案されるが、それだけはきっぱりと、車は私が呼ぶからと言って断った。

 

で、ん?と、瞬時に彼女が銃などを隠し持っていないかどうか改めて服装をチェックする。

彼女はバッグなども持っておらず、携帯だけ持った手ぶらで、キャミに短パンという軽装だったので武器は持ってはいなそうだった。

ここブラジルで知らない人のさらに知り合いの車になんて乗ったら絶対に危険に決まっている。

どこに連れていかれるかわからない。やや貧しそうではあったがふつうぽい女の子だといえ、油断してはいけない。

盗まれ、危害を加えられる可能性だってあるのだから。

 

そうこうしているうちに私の呼んだタクシーが着いた。

ええい、ままよと彼女の手を引いた。

 

もう、いいや。なんか彼女を放って行けない。

今日は久しぶりにブラジルでいろんな人に良くしてもらったし。

もしちょっと悪い子だったとしても、私が呼んだタクシー内では彼女も私に危害を加えることはできないだろう。

 

うん、でも、だからね、知ってるの。

服装を改めてチェックしたと同時に、彼女の主な歯が数本無かったのも既に気が付いてたの。

彼氏の家まで寄って行くから、住所を教えて、って言ったけど、彼氏が最寄り駅まで迎えに来てくれるから、タクシー代は彼氏が持って来てくれるからちゃんと半分払うからねって言われて、じゃあ、彼氏が迎えに来てくれるのは駅のどっち側?って聞いても、わからない、と言う。

 

私は、だからね、何度も言うけどさ、ちょっとはさ、知ってるのよ。

 

でも、今日はせっかく気分がいいし、お金の問題では無くて、彼女が目的地で何も言わずお金を払わずにタダ乗りして逃げて降り去っていくのだけは、見たくなかったんだ。

 

だから、彼女の降りるとこらへんの少し前で、今日はお金はいらないよ、私の帰り道の途中だし。困った時はお互い様だからさ。

と、言いました。

ちゃんと払うつもりだったのかもしれない、でも、親切にしたつもりだったのに、もうブラジルで嫌な思いをしたくなくて、万が一彼女に裏切られるのが怖くて自分から切り出した。

 

彼女はすがすがしくさっぱりと、ありがと、と言って、ああ、ここらへんでいい、と言って降りていった。私の名前すら聞かないままに。

 

そのタクシーの運転手さんが話しかけてくる。

私たちの会話を聞いていた彼は、もちろん状況を察していた。

私と彼女が電車の中で知り合ったばかりということや、私が外国人だということ、タクシーのお金はいらないと彼女に言っていたこと。

 

会話のはじめは、君はとってもいい人だね、困った時は皆で助け合うものだから。みんなが助け合う輪ができたら最高だよね、と言ってくれていたが、だんだん説教になってきた。

 

私はある程度わかってたから、、、私がちょっとした親切を、日本人は金を持ってるから利用したろ、とかで無くて、他の困っている人にちょっと親切にしようかと彼女が思ってくれたらいいよね、騙そうとする人もいるけど、私も困っていた時に名前も知らない見ず知らずのブラジル人に助けてもらったこともあるし、、、なんてことも言った。

 

彼は、わからない、わからないよ?でも、彼氏の住所がわからないとかおかしいよね?どこらへんに彼氏が迎えに来るの?って聞いてた時にも駅のどちら側かもわかってなかったし。

本当に残念なことに人を騙そうとする、特に君のような外国人を騙そうとする人がこの国ではたくさんいるんだよ、と、こんこんと説教をしてくる。

 

さらに、わからない、わからないよ?でもね、多分彼女はアプリとかで知り合った誰かもわからない男に会うところだったんじゃないかな、と僕は思うよ。え?では彼女はアプリで知り合った男に身体を売るためにここに来たのかって?いや、そこまでは僕にもわからないけどね。

家の前に着き、ほら、でも料金は彼女の降りるとこを通ってもほとんど変わらなかったよ?と言ってみる。

そういう問題じゃないよ。お金の問題じゃないんだ。とにかく君は本当に悪いブラジル人にはくれぐれも気を付けないといけないよ、と、タクシーを降りる間際まで心配(説教)してくれた。

 

自分ではある程度判断できているつもりでも、きっと生粋のブラジル人から見たら、私はお人良しで危なっかしく見えるのだろう。

 

前述のように知り合った人にできるだけ礼節を持って親切にしたいと常日頃思っているはいる私だ。己の贖罪のため(別に犯罪を犯したわけではない)の、自己満足かもしれない。

だが、ここでは外国人・日本人は金を持っているのだと、たかってくる輩も多いことは私も良く知っている。

だから、本当は皆に好かれたい、もっと親切にしたいという我が欲望もあったりして、言い方は悪いが小銭程度は私が少し多く払っても別にいい、とここでの経験上思っているが、それが相手にとって癖にならないように控えざるを得ない時もいっぱいある。

いつも私もそれをしてしまうと、ブラジル人みんなそれが当たり前になってしまい、結果的に、私ももちろんそうなのだが、他の外国人・日本人までもが嫌な目に遭ってしまうこともあるかもしれないとも、思う。

 

難しいところだ。

 

 

私は、西原理恵子さんの本が好きで、ほとんど読んでいる。

最近も、ダーリンは70歳(代w今後も続くと思うので)シリーズを読み返していた。

彼女は(直接存じ上げないのに彼女、なんて私が言うのは偉そうで申し訳ないが)、日本の、この時代的に、特に現代の女性が生きるのを楽にしてくれる生き方を提示してくれるパイオニアであり、面白くとっつきやすく(時に常識外れで露悪的な部分もあるがw)あっぱれな生き様を見せてくれていて、私にはとても勇気づけられるものだ。

私が知らないだけかもしれないが、他にこんなにも年上のモデルとして女性が楽に生きられるような生き方を見せてくれる方は知らない。愛に満ち、そして辛い日常すらキレキレでギリギリのギャグにしてしまうセンスと技量。

だから、すでに高名であった高須クリニック(に行ったことはまだ無いが)のダーリンの方も、面白くも豊かで立派な方だなあと、彼女の本などを通して知ることになった。

 

その影響だか、今日は終電で会ったその彼女にちょっとした親切くらいしたいという気になったのかもしれない。

盗まれたり、殺されなかったし、いいや。

 

私は西原理恵子さんや高須さんのように突き抜けることはできぬ凡人ではあるが、愛を持って人生を全うできたらいいなあとそんなことを思う、ブラジル午前5時、だ。

 

 明日も仕事さ。もう寝ろ。

自分は裕福ではもちろん無く、5000円以上のものを買う時は自然と身体が震えてしまう小者感あふれるザ・庶民であるのだが、願わくば、いつかケチなことを気にしない小金持ちくらいになって袖振り合うも他生の縁と、困っている誰かのために惜しみなく気前よくバンバン愛情もお金も使うような人になれたらいいなあ、と思う。