ブラジル・日本人サンバダンサーの華麗な日常

ブラジルに住む日本人サンバダンサーの全く華麗ではない日々

ブラジルカーニバル2022⑦ネバー・ギブアップ!

ブラジルでのカーニバル期間は終わったが、アフターカーニバルとして今回はリオで私がカーニバルに出ていた頃の小話をしよう。

 

こちらのカーニバルでは、しばしば参加衣装の配布がひどく遅れたりすることは前3回に渡り書いた

 

 

www.joebrasil.net

 

ので、それについてはお分かりいただけたと思う。

 

そしてまた、良くあるのが衣装のサイズトラブルだ。

最近は一人ずつちゃんと名前を付けて大きいポリ袋に仕分けして渡してくれるのだが、それでもなんでこうなった?という間違いが非常に多い。

 

まあ衣装の場合は自分にフィットさせるように直せばいいのだが、靴となるとそうはいかない。

 

大きいのだったらまだいいが(それでも自分のサイズより5サイズも大きいのを渡された時はのけぞった)小さいとそもそも履けないので変えてもらうしかない。

だけどいくら変えてくれと頼んでも、それでなんとかしろ、代えはない、と言われてしまうことが多い。

どうせーっちゅーねん。

その年、私は2サイズ小さいサンダルを支給され(当然事前にサイズは告知済み)、所属グループの担当の偉い人に変えて欲しいとさんざん言っても代えは無いの1点張りで途方にくれていた。

当時私はパスィスタというカーニバルにおいてガツガツサンバを踊る50名くらいのグループ(人数はチームによる)の一員として出ており、衣装は絶対に皆お揃いでなければならない(審査の対象)ので、勝手に好きな靴を履いて出ることもできなかった。

 

履けない靴はどうしたって履けないので、カーニバルの3日ほど前にもう一回偉い人に直談判しに行くと、

 

「靴が小さいときはビニール袋に豆と水を入れて靴のきついところに2~3日入れておくんだよ。そうすると豆が水を吸ってふくらんでしばらくしたら靴が伸びる。みんな昔からそうしてるんだよ。君は知らなかったのかい?」

と言われ、

 

「おお!それは良いことを聞いた!早速やってみる!ありがとう!!」

 

と言い、これならイケそうだと意気揚々と家に帰った。

 

こういうのは嫌いじゃない。

なんか“ブラジルおばあちゃんの知恵”、“昔ながらの民間療法”的な感じがして、今まで知らなかったブラジルならではの裏技を試せるのにちょっとうきうきすらしていた。

 

家に帰り早速そのようにやってみる。

その夏のリオはたいそう暑くて、連日40度前後の気温の、天気の良い日が続いていた。

1日経って見てみると、水を吸った豆がビニール袋をパンパンに膨らませ、取って履いてみるとサンダルの足の甲を支える部分の幅が確かに少し大きくなっている。

指の部分の開いたサンダルだったし、これならイケそうだ、と嬉しくなり、いや、でもまだちょっときついからと追い豆追い水をして大事にベランダの端に置いておいた。

 

すると当日には見事にサンダルを履いてむしろ甲の部分に少し余裕があるくらいにまで大きくなっており、

 

すごい!本当に大きくなってる!教えてくれてありがとう!

 

と感動し、もし困ってるひとがいたら今後みんなにも教えたい!!とテンションぶち上りでカーニバルに臨めた。

 

その年は靴問題以外は衣装に特に大きな問題は無かったと記憶している。

なのでカーニバルが出発してからも集中して踊ることができた。

 

…はずだった、のに、パレード会場の3分の1に差し掛かる頃から、何か踊りにくく何度かコケそうになってしまった。

あれ?おかしいなおかしいな。

さっきまでは調子が良く踊れていたのに。

 

パレード会場半分に差し掛かるくらいで気がつく。

 

 

サンダルだ。

 

 

 

こりゃサンダルだ。

 

 

 

どうにも踊りにくいのはサンダルのせいだと気づく。

こちらの靴、特にカーニバルの大量生産の靴はあんまり仕立てが良くない。

だから途中で壊れたりすることも良くあることだ。

 

うわー、サンダルが壊れたんだ。

そう思い、でも転ばない程度になんとか思い切り踊るようにと頑張った。

けれど靴中が滑るような不安定な感覚がして、全然思うように踊れない。

今までこの日のためにあんなにに頑張ってきたのに、と泣きそうだったがなんとか無事パレードを終えないといけないととにかくひっくり返らないように気をつけながら踊った。

(パレード中に止まってしゃがんで靴を直すなどの行為をすれば衣装に不備があったとみなされてしまうのでできない)

 

そして、パレードの3分の2に差し掛かる頃。

 

あれ?でもこれちょっと靴の中が滑りすぎじゃない?

 

壊れてるとかって感じでもなくない?

 

汗ですべってる?

 

でも汗かくのはいつものことで、コレなんかそういう話じゃなくない?

 

 

そして、突如稲妻に身体を貫かれるかのようにひらめいた。

 

ちょうどsetor7を通りかかりカーニバルも最高潮を迎えるという時だった。

 

 

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豆だ。

 

 

 

 

 

納豆だ。

 

 

 

 

つまりはこういうことで、水を吸った豆が炎天下で腐り納豆状態になり、そのエキスが知らぬ間にビニールの開いた穴を通してサンダルに移っていて、それが汗をかいて水分を吸収したことによって生き生きと復活し驚異のねばねばパワーを遺憾なく発揮してしまった。

カーニバルの前半調子が良かったのは、汗をまだあまりかいていなかったからだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

恐るべき、ナットウキナーゼ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

納豆菌は、生きていた。

 

 

 

汗をかいて濡れた状態で(私はかなりの汗っかき。夏はいつも鼻の下に髭のような汗をかくところがチャームポイントだ)踊り続けたことにより、いい感じに滑るための隙間をおし広げてしまっていた。

さらに靴の中で滑り続けたことによって圧力がかかり、作りが良くないのも相まって、むしろサンダルはつるつるガバガバになってしまった。

 

パレードの終盤は、あっちいってツルッ、こっちいってツルッ、あ、つるっつるっつるっ(リズミカルな節で)。

 

想像してみて欲しい。

サンバのビキニの衣装と羽を装着しゴージャスな化粧をしてキメキメにキメた女が大歓声のきらびやかなサンバ会場で納豆の汁と必死に格闘しつるつるに滑り続ける様を。

 

最後はころばずリズムに乗ってステップを踏むことに精いっぱいで、とても楽しんで踊れるような状態ではなかった。

 

 

 

誰が悪いと言ったら、豆に水を加えて炎天下に3日も置いておいたら腐る、そんな当然のことに考えが及ばなかった私が悪いのだが(そもそもはサイズの合わない靴をくれた事な)、埼玉出身シティーガールである私はそんな原始的な方法で靴を伸ばした経験など無かった。

そこまで考えが及ばなくったって仕方がないじゃないか(えなり)。

 

 

 

 

 

 

 

 

この思い出もかなりのしょーもなく苦い経験として私の胸に残った。

もっと踊れるはずだったのに、とこの時は大変悔しい思いをした。

 

 

 

 

 

 

 

でも、こんな経験をしたって、決して私は負けない。

 

 

 

 

 

 

今後のどんなつらいパレードだって、耐えて花を咲かせて見せよう。

 

 

 

 

 

 

もし、くじけそうな時はこの日のことを思い出して、こう叫ぶのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねばー・ギブアップ!

(また駄じゃれオチ)

 

 

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滑りついでに二つとも足跡だけでもツルッとどうぞ

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