私のサンパウロでのシェアハウスで、まず初めに入ってきたのはアリソン君という男子だ。
大学で歴史を専攻していて、大学院の卒業間近に田舎では職が無いからと先生の職を探しにサンパウロに来たのだ。
そして、次に入ってきた女子はモニーズィという。今はマーケティングの仕事をしているという。英語もペラペラで、お父さんは弁護士さん、自分の大学の専攻は心理学だが、自分も弁護士の資格を持っていて、英語の先生としてタイなどいろいろな国に行ったこともあるという。
もうひとりの男子はミナスジェライス出身のペドロ君。おしゃれでセンスが良く、訪ねてきた頃は頭をピンクに染めていて、ゲイ爆発の物腰。デザイン関係の仕事をしているおしゃれさんで、事務所がこの家のそばに移ったので近くの家を探していたという。
皆、それぞれフレンドリーかつ魅力的で楽しい人たちだった。
カーニバルが終わった3月初旬、まず、たまたまミナスジェライスの実家に戻っていたペドロから、コロナの問題があるのでとりあえず僕はリモートワークもできる仕事だし、9月まで帰らないことにした、という連絡があった。
その当時はまさか誰もコロナがこんなに長引くと思っていなかったので戻るまでの期間が長すぎると思ったものだが、まあ、彼がそう決めたのなら別に問題はないと、皆納得して過ごした。
今となっては、彼は先見の明があったのかもしれない。
そんな中、私がこのコロナ禍で、本当に感謝していたのは、アリソンとモニーズィの存在だった。
家にこもらなければならない日々の中で、どうでもいいようなことを喋り合ったり、一緒に料理を作ったり、また、私にとってはブラジルの情報を得たり、それについての彼らの見解を聞けることはとっても有難かった。
もしこんな引きこもり生活の中でずっと一人暮らしをしていたら頭がおかしくなっていたかも、と思うと、ぞっとする。
みんなの時間が合う時は、私がストレッチのレッスンをしたり、モニーズィがヨガのレッスンをしたり、アディソンが歴史についてのレクシャーをしてくれたり、
みんなでトランプをしたり、あまつさえ私が持ってきた花札でみんなで遊んだりもした。
週末は飲んで騒いだり、踊ったり、ピザを頼んだりして飲んだくれて一緒に楽しんだ。
彼らは頭も良くて、ふいに出る話さえ面白く興味深くて、私にもとても勉強にもなった。
ブラジル人と暮らすとなると規則を守らない人だっているかもと思いきや、二人は緊急事態宣言を遵守するタイプの人間で、ご飯作り隊長である私が3日~1週間に一回くらいのスーパーへ行くたまの買い物以上にずっと家で過ごしほとんど出かけることも無く、コロナに感染しないようにととっても気を付けて過ごしていた。
私は気も合いこのような非常事態下においての常識も分かち合える同居人に巡り合えたことが本当にありがたくて、いつもふたりに感謝して、不謹慎かもしれないがとっても楽しく彼らとの日々を過ごさせてもらっていたのだ。
だが、そんなある日、モニーズィのお父さんがコロナに感染したことがわかった。
それは、4月初め頃の話だったと思う。