日本一時帰国前に軽い手術をブラジルで行ったことは以前にも書いた。
軽い手術といっても足首と股関節のところにメスを入れて血管を引っこ抜くというもので、一日だが入院も必要であった。
一週間は手術後飛行機に乗ってはいけないということだったのに、あちらのミスで3日後に乗る羽目になってしまったのだった。(あらすじ♡)
私が車付きの移動ベッドで手術室に運ばれてきた時に久々会えた手術医は、
『君は、やりとげたー!!!(手術ができることになった、の意)』
とハイタッチをせんばかりのノリノリハイテンションで話しかけて来、
『やあ、元気かい?!』
と満面の笑みで張り切って挨拶をしてきた。
本来やり遂げるのはお前の役目だろうがよ。
『げんき、、、じゃない。』
と、手術着を着せられへんな帽子をかぶったまま横たわりそれだけを絞り出して答えると、手術医はちょっと口を歪ませしょっぱい顔をした。
自分のミスで手術日が延期になったというのに、なぜ私がヒャホーと陽気に応じると思えるのか。
手術台に乗せられ、下半身麻酔をされ、腰から下はテントのような布が張られているので今どんな状態なのかさっぱりわからない。
もう寝かされて小一時間は経っているだろうに医師が看護師たちと軽口を叩いたりしているのがたまに聞こえたので手術はまだ始まらないのかな、と思っていた。
私に手術中付くと手術前に紹介されていた看護師がテントからひょっこり顔を出して、
『念のため今からおしめをするからね』
と断ってきた。
おしめか!!
手術はどうやら終わったらしい。
下半身の感覚は無かったが、辛うじておしりの上あたりにおしめをされている感覚があった。
ちなみに、手術着の下は紙パンツ一枚履いてなどいない。
別にいいのだが、ちょっと気になったのは、私付きの看護師は頭をスキンヘッドにしたブラック系の筋肉隆々マッチョ兄さんだったということだ。
股関節も切ったし、内腿の血管を抜いたので、私の脚はずっと御開帳状態だったと思われる。
その横で手術しながら談笑とかすんな。
仕上げには屈強な男性による初めてのおむつプレイ。
別にいいんだけどさあ。
いいんだけど、せめてそこくらいは女性にするとかいう気遣いはできないかね?
やっぱりブラジリアンワックスをやっておいて良かった~!とか、いや、本当に良かったのか?自分しっかりしろ、とかおしめとか複雑な感情が入り乱れもうどうにでもなれ、といった気持ち(やけくそ♡)で手術室を後にした。
翌日は午前中に退院して良いということだったのに、医者が説明に来るのでそれを待って退院になる、と言われる。
そして、もちろん待てど暮らせど来やしない。
はい案の定、もうベッドを明け渡さないといけない時間になって、やっぱり医者は来ないのでもう帰って良いという。
術後の心得など何も聞いていないので、慌てて看護師さんに説明を頼むと、しばらくは安静に、2分以上立ってはいけない、シャワーすらも椅子に座ってしろ、と言われる。
ねえねえ2分以上立っちゃいけなくて、どうやって3日後日本まで行くの??
日本行きを延期しようかと考えもしたが、調べると800ドル以上の延期料金が必要だった。もちろんそんなの病院が持ってくれはしない。さらに、私の日本での貴重なお休みが削られてしまう。仕事の休みの調節だって大変じゃないか。なんであいつらのミスのせいで私が小さいとは言えない不利益を被らなければいけないのか。
結局、病院に迎えに来てくれたシビアな日系人の友人(話をしている間に興奮し、病院訴えたろか、と鼻息を荒くしている私に向かい、訴えてもお金だけがかかって面倒でしかもどうにもならないよ。もっと損するだけ、と軽くしめられしょんぼりした後)に航空会社に車いすを用意してもらうことを勧められ、結局お願いすることになった。
老人でも明らかな怪我人風でもないのに車いすを使うのは申し訳なかったが、重い荷物も持てないので空港に向かうのには急遽最弱の弟(本当に良いやつ涙)
に付き添いを頼み、なんとか無事に日本へ出発することができた。
車いすの人に対するサービスが思ったよりも手厚くて、航空会社さんや働く人たちの配慮も有難くて、私が知らなかったところで弱者にやさしくする取り組みを世界的にみんなで当たり前に行っていたんだな、世界って偉いな、と世界にちょっと好感を持ったが、それでも私のブラジルに対しての傷ついた心はまだ癒されることはなかった。