ブラジル・日本人サンバダンサーの華麗な日常

ブラジルに住む日本人サンバダンサーの全く華麗ではない日々

リオ五輪開会式・閉会式に参加してみた

リオ五輪の閉会式がブラジル・リオ・デ・ジャネイロ時間の昨日の夜に行われた。

感想を求められ何か一言、と問われれば、

 

寒かった。

朝から雨が降ったりやんだりしており、さらに強風吹きすさぶ中の本番参加中は、体感ではブラジルではあっても、これそのうち雪に変わんじゃね?と思わせるほどの寒さだった。

半そでの衣装のままずぶ濡れで凍え、やっとビニールのカッパがボランティアに支給されたのは式も中盤を過ぎるだいぶ後で、雨が小降りになった頃であった。

贅沢を言うつもりは無い。

だが今日は昨日に引き続きの寒さもあって、風邪をひいてしまった人が続出しているだろうと予想する。

ボランティア出演者として開会式から何度も練習に通ってきて、セキュリティーなどはしっかりしておりブラジルにしては頑張っている方だとは思うが、さすがブラジル適当さ加減がひどかった。

そのために途中で脱落している人もかなり見受けられた。

セレモニー出演と競技ボランティアを掛け持ちしている人も結構いるので練習時に電車から一緒に乗り合わせた掛け持ちのおばさんの話を聞いてみたところ、競技ボランティアはさらに大変なようで離脱する人も多く、休憩時間も少なく何時間も立ちっぱなしで仕事をし、しかもひどい場合はそもそも仕事内容すら何度聞いても教えてもらえないまま1日中ほったらかしにされたりして二度と来なくなった人もいるくらいだと文句を言っていた。

昨日もロッカー数が参加者やスタッフの数に比べて明らかに足りておらず、困る人が続出していた。

はなからこんなボヤき節ばかりで申し訳ない。

そう、キリがないので何を言ってもしょうがないのだ。ここはブラジルなのだから。

 

私の閉会式での役割はサウジアラビア選手代表の付き添いで、旗を持ったりしていた。

よし!!そこで石油王の息子であるエキゾチックな体操選手あたりに見初められるのだ!

と先走りがちな日本の友人から指令を受けていたのだが、なんと選手は前日に全員帰ってしまったとこのことで、他の国担当の子たちはコミュニケーションをとったり一緒に写真を撮って盛り上がっている傍らで、代表選手の代わりに配属されたこれまたボランティアの前歯の左側の歯が2本抜けた選手村で働いていたという陽気なおじさんとともに世間話をしながら待機場所の廊下で出演前の時を過ごす。

後で聞けば外国人の他の旗持ち役の子はこっそり自国の旗に変えてくれと頼み、戦後のような闇取引が成立していたと言う。

友達になった子に、だからあなたもそうすればよかったのに!と言われたが、他に日系らしき出演者もいたようだし、皆が自分の国の旗を持ちたいと主張したら大混乱になるだろうし、やっぱりずうずうしいよな、、、と考えたらとても言い出せなかった。

日本の旗を持てたらとても良い記念になったと思うが、一応私も和を重んじる日本人であるので、多分それを知ってからでもやはり取り替えてとは言わなかっただろうと思う。

 

今回の閉会式で一番良かったと思ったのは贔屓目かもしれないが日本からの演出だ。

ブラジル人も一線のプロとなると肉体のポテンシャルや技術、表現力ともに素晴らしいが、ピッタリと呼吸や動きをそろえるのはやはり日本人の器用さや真面目さにはかなうまい。

練習時から出演直前の待機通路では日本のパフォーマーたちが間近にいたが、皆緊張した面持ちで一様に同じポーズをとり微動だにせず、禁止されているのだろう写真にも応じず周りの雑音には目もくれない。

周りのブラジル人から

Oh,,,サムライ、、、

と言うつぶやきがどこからともなく聞こえてきたほどのストイックさで臨んでいたのも、ブラジル人とは異なるそのたたずまいがとても印象的であった。

ブラジル人であったらうっかり応援や写真に応じている間に出発の合図に出遅れるなんてこともあり得そうだ。

 

ものすごく緻密でダンスのクオリティーが高く、良くも悪くも日本だなあと感心した。

安倍首相のマリオも見たよ。

土管から出てきた安倍さんの姿が名前と役職とともに大きなスクリーンに映し出されると隣にいた子も、

え!!あのマリオは日本の首相なの!!??超ウケる!!!

と大爆笑していて、会場は大盛り上がりだった。

私もリハーサルで何度も日本からのダンサーのパフォーマンスは見ていたが、土管から誰が出てくるかなどは知らされていなかったため、なかなか粋なことをするなあと驚かされた。

 

次の開催地は日本だということで、私が純日本人だと知った他のボランティアキャスト達から大注目され、執拗に私の日本の実家の場所や広さを聞かれた。

東京と隣り合わせた市に実家があると告げると、獲物を狙うハンターのようにじりじりと周りに4年後に訪ねたいという人が殺到し私の携帯メモリーをみるみる浸食していった。

まったく、みんな抜け目がないよなあ。

 

しかし普段知り合う機会の無い老若男女のいろんな人と話せたり、友達になれたことは私にはとても貴重な体験であった。

キャストにもいろいろなくくりがあり、他のグループでサンバ隊も出ていたのでその中に私のサンバの友達もたくさんいたのだが、何千人も集まるリハーサル会場においてひとりでもサンバ隊の人が現れると、知り合いでなくともこれはサンバの人だな、、、とすぐ察することができるほどとびぬけて派手で輩感にあふれており、練習時にもサンバ隊のへそ出しヒョウ柄のスパッツをはいた女子やゲイ丸出しのサンバダンサーが他のグループにいる私と次々と親しげに挨拶を交わすのを目撃され、え?なんで?日本人のあなたと??というように周りの同じグループの人たちに驚かれていた。これも良くも悪くもリオのサンバ界っぽいな、、、と客観的に、いかに自分がブラジルの中でも特殊なところに普段はいるのかを感じさせる一幕となった。

 

最後のカーニバルの演出ではサンバ隊が場内を1週した後でオリンピック出場選手たちも乱入してのお祭り騒ぎとなり、近くでも数人の日本人の選手たちがはしゃいで踊り子たちと写真を撮ったりしているのが見受けられた。

間近で見た生え抜きの代表選手たちはどなたもとてもカッコよく見えた。

私とも写真を、と言ってくれた選手もいたのだが特に見初められた訳でも無く当然写真を撮ったらそれまでで、みごと日本の友人の期待に応えるという夢は叶えることはできず、予想通りリオオリンピック玉の輿杯ではサウジアラビアに続いて苦めの二連敗を喫する結果となった。速報。

 

 帰りは11時を過ぎており1本で帰れる電車が終わっている時間で、仲良くなった子が彼氏が迎えに来てくれるので送って行ってあげる、と申し出てくれた。

彼女の名前は『タバタ』といい、都内の友人も住むその町に愛着もあり親しみを持ったのをきっかけに特に仲良くしていたのだが、悪いと思い一回断るも、そんなに遠回りじゃないし彼氏も良いって言ってくれてるから!と強く勧めてくれたので、

タバタ、、、ああ田端、、、京浜東北線よありがとう(山手線も)

と、素直に受け入れさせてもらった。

彼女とは開会式から同じグループにいて、プライベートなことも話したり既に遊びに行く約束もしていて、日ごろの態度からも日本に来たいからというのではなく純粋に私に親切にしたいと思っているだけなことが伝わってきてとても嬉しく思った。

 

個人的には練習に通うのも結構大変だったりと楽しいことばかりでもなかったが、日本の友人が言ってくれたようにおばあちゃんになって、あー、リオオリンピック懐かしいねえ~、と反芻しとても良い思い出 となる日が来るのだろう。

 

何よりタバタをはじめ、ボランティアを通じて良い人たちに出会えたということが今回の一番の宝になるかもしれないな、と思った。

 

 

オリンピックの選手の方々、式の出演者、スタッフのみなさん、お疲れさまでした。

 

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